※本ブログは、米国時間2月9日に公開されたA10本社ブログの抄訳を基にしています。

コストは上昇、供給は限定、需要は切迫

無線および有線/FTTH事業者、電気協同組合、自治体などの地域インターネットサービスプロバイダ(ISP)は、地方や遠隔地のコミュニティに電力とインターネット接続性を供給する上で、長い間重要な役割を果たしてきました。現在、260の電話会社と834の電気協同組合がアメリカの地方の大部分にサービスを提供しています。地方の人口は全体のわずか14%ですが、面積は全体の72%を占めています。現在、これらの多様な地域ISPは、サービスが十分に提供されていない残りのコミュニティと約2,300万~4,200万世帯を接続する上で重要な役割を果たすべく、準備を整えています。

これは、単に未だサービスが十分に提供されていないコミュニティが、人口密度の高い都市部では当たり前とされている高速ブロードバンドを提供する以上のことを実現するまたとない機会です。新たな政府の資金や社会的な関心の高まり、デジタルアダプションの拡大を十分に活用することで、地域ISPは、これらのコミュニティが取り組むデジタルアダプションの飛躍的な推進を支援します。また、古いインフラを持つハイテク都市部にはない新しい機能を提供することができるようになります。

米国連邦通信委員会(FCC)のRural Digital Opportunity Fund(RDOF)やEmergency Broadband Benefit Program、Connect America Fund、アメリカ農務省(USDA)のReConnectなどの情報格差対策プログラムや、最近ではインフラ投資・雇用法案(IIJA)がデジタル・ディバイドを解消するために数十億ドルを提供しています。現在、地域ISPは新しい分野に進出し、ビジネスを成長させる機会が豊富にあります。しかし、その前にIPv4の枯渇がもたらす課題と、それが新しい加入者IPアドレスのコストに与える影響に対処する必要があります。

地域ISPが躍進するためには、重要なラストマイルアクセスだけでなく、ネットワークのエンドツーエンドに焦点を当てる必要があります。また、加入者の期待に応えながら、ネットワーク全体のデジタルレジリエンス(回復力)とセキュリティを強化するコアネットワークテクノロジとシステムにも注力することが求められています。より包括的なアプローチにおいては、完全なキャリアグレードのエンドツーエンドのネットワークによって新しい加入者にサービスを提供することになります。

地域のISPが見落としがちだが重要なコア技術の1つは、キャリアグレードのネットワーク構築、つまり枯渇するIPv4アドレスを管理し、IPv6導入に至る道筋を提供する技術です。

IPv4はどうなる?

インターネットに接続されるすべての家庭や企業には、IPアドレスが必要です。IPv4アドレスは、元のアドレス指定スキームを使用して、数年前に地域のInternet Routing Registry (IRR)によって全て割り当てられてしまいました。続くプロトコルであるIPv6は、ほぼ無限のアドレス空間を提供しますが、採用状況が一様ではなく、運用上の課題に直面しています。現在、20年にわたる業界の強力な推進にもかかわらず、IPv6はまだIPv4を完全に置き換えることができていません。加入者のインターネットセッションの約2/3とウェブサイトの80%はIPv4のみで、IPv6をサポートしていないのです。さらに、多くのアプリケーションやセキュリティデバイス、およびその他のネットワーク機器においても、IPv6を完全にはサポートしていません。

このことは、すべての人にあらゆる場所への接続性を提供しなければならない地域ISPにとっては、今後数年間にわたり両方のプロトコルをサポートする必要があることを意味します。

IPv4アドレスは希少なリソースとなっており、その結果、民間のブローカーを介した価格は2022年初頭に1件当たり60ドルまで急騰しています。AWSやTencent、Alibabaなどの大規模なハイパースケーラーは、競争優位性を創出し、自社のクラウドサービスのエンタープライズユーザーが常に適切なIPv4オプションを利用できるようにするために、ブローカーを介してIPv4アドレスを購入しています。例えば、AWSは1億以上のIPv4アドレスを管理していると推定されています。一方で、大学や大企業、Tier 1モバイルおよび固定ネットワーク事業者、地域サービスプロバイダーなどの組織は、余ったIPv4アドレスを市場価格で「売却」し、その資金を他のインフラプロジェクトに使用しています。

地域ISPは、A10のオンラインツールを使用して、将来のIPv4コストを見積もることができます。

ISP IPv4のジレンマ、留まるべきか進むべきか?

数年前にARINから「無料」のIPv4アドレスの割り当てを受けた地域ISPは、そのIPv4アドレスを使用して彼らの初期ネットワークを構築しました。そしてサービスを提供するすべての加入者/世帯にパブリックIPを単純に割り当てたり、基本的なNATを使用してIPv6トラフィックを転送したりしてきました。現在、新規構築による加入者の大幅な増加に直面しているため、既存のネットワークアーキテクチャを維持しつつ多大なコストをかけて追加のIPv4アドレスを取得するか、キャリアグレードNAT(CGNAT)、IPv4-IPv6移行、およびその他の必要なアップグレードを含むネットワークアーキテクチャの根本的な変更を行うかという技術的な決断を迫られています。

IPv4アドレスの枯渇やIPv4アドレスを新たに取得することを避けるために、より新しい規格であるIPv6を使用することもできます。IPv4アドレス枯渇は、20年以上にわたって業界のトピックでした。Tier 1サービスプロバイダーは、CGNATや、デュアルスタック、およびIPv4-IPv6移行戦略の組み合わせによって、既に技術的な複雑さに対処しています。しかし、予算やリソースが限られており、加入者を大幅に増やす機会がない小規模ISPにとっては、政府からの多額の資金投入が、既存のIPv4アドレスプールの容量や最終的なIPv6への移行計画を含め、コアネットワークの再評価とアップグレードの初めての機会かもしれません。

多くの場合、小規模組織はIPv6移行のための完全なネットワーク変更に伴う短期的なコストと混乱を正当化できません。IPv6の全面的な導入にはコストと時間がかかります。IT管理者は、接続されているすべてのデバイスを棚卸し、変更または再設定する必要があります。必要なデバイスまたはアプリケーションが動作せず、トラブルシューティングと修正に時間がかかるサービスの中断が発生するリスクや、古いお客様の機器がIPv6と互換性がなく、交換コストが高すぎるという事態もあります。管理者は、日々の運用上の要求と、5Gやクラウド、仮想化、エッジクラウドなどの戦略的イニシアティブを推進する必要性とのバランスを考慮して、短期的にはIPv6移行を遅らせる必要があるかもしれません。

堅牢なキャリアグレードのネットワーク技術は、限られたIPv4アドレスプールの維持や、IPv6へのスムーズな移行メカニズムの提供により、暫定的なソリューションを提供できます。

CGNATの定義

ネットワークアドレス変換(NAT)の標準であるキャリアグレードNAT(CGNAT)により、既存のIPv4アドレスを延命し、新しく追加されるサブスクライバーをサポートすることができます。

標準NATはプライベートIPv4アドレスをパブリックIPv4アドレスに変換しますが、キャリアグレードNATはさらに変換レイヤを持ちます。これにより、ISPは独自のパブリックIPv4アドレスを保持し、サービスプロバイダーのプライベートIPv4ネットワークを介して加入者トラフィックを処理することで、独自のプライベートIPv4ネットワークと複数の場所やデバイスを持つ加入者・企業をサポートできるようになります。通常、サービスプロバイダーはNAT444シナリオでキャリアグレードNATを使用します。

  • お客様のプライベートIPv4→ ISPのプライベートIPv4アドレス
  • ISPのプライベートIPv4アドレス→ ISPのパブリックIPv4アドレス(インターネット接続用)

NAT444(private to private to public)の導入により、複数の顧客ネットワークが独自の内部ネットワークアドレス空間を持ち、ISPの内部ネットワークアドレス空間を経由して、インターネットへのアクセスのために、1つのISPパブリックインターネットIPv4アドレスを共有することができます。住宅向けのシナリオでは、NAT444を使用すると、ホームルータが複数のホームデバイスをサポートし、ISPが1つのIPアドレスで、複数のホームデバイスまたはサブスクライバーをサポートすることができます。

CGNATを使用することで、1つのIPv4アドレスで複数のエンドポイント(加入者/ホーム)をサポートできます。最も一般的なオーバーサブスクリプション比率は、有線オペレータの場合は64:1ですが、さらに高くなることもあります。したがって、1つの/24(256個のIPv4アドレス)で16,384人以上の加入者をサポートできます。ISPが過剰なIPv4アドレスを 「売却」 することを決定した場合、それぞれのピーク価格60ドルで、未使用の/24ブロック1つによって15,000ドル以上(仲介手数料を除く)を得ることができます。IPv4アドレスの市場価格は、地域、ブロックサイズ、およびその他の市場条件によって異なります。

図:CGNATによって1つのIPv4アドレスを複数のサブスクライバーで共有
図:CGNATによって1つのIPv4アドレスを複数のサブスクライバーで共有

CGNATを使用すると、地域ISPは成長のための新しい機会を獲得できます。同時に、適切な時期にIPv6移行のためにビジネスを位置づけることもできます。このトピックについては、「IPv6:準備はできているか? CGNATを使用してIPv4とIPv6を共存させる方法」(英語)で詳しく説明されています。

IPv4-IPv6移行技術

いまだ多数のWebサイト、デバイス、ネットワークが主にIPv4で構築されています。ほとんどのサービスプロバイダー、教育機関、企業は、自身のネットワークをIPv6に完全に移行した場合でも、ユーザーとサブスクライバーのためにIPv4とIPv6の両方の接続をサポートする必要があります。このハイブリッド環境の結果として、この移行プロセスを支援し、IPv4とIPv6のデバイス、ネットワーク、およびインターネットの接続先を接続可能とするテクノロジが登場しています。これらのテクノロジは、IPv4とIPv6のアドレスを変換するか、トラフィックをカプセル化して互換性のないネットワークを通過できるようにします。これらのテクノロジには、NAT64、DNS64、DS-Lite、464XLAT、Lw4o6、MAP-T、MAP-E、6rdなどがあります。

これらのアドレス変換およびプロトコル変換技術により、加入者は、デバイスが使用しているプロトコルスタック、IPv4/IPv6に対するプロバイダーのアクセスおよびコアネットワークのサポート、および宛先サーバーのサポートに関係なくコンテンツに透過的にアクセスできます。DS-Liteなどのトンネリング技術はIPv6アクセスネットワーク経由でIPv4パケットをカプセル化し、IPv6 Rapid Deployment(6rd)はIPv4アクセスネットワーク経由でIPv6パケットをカプセル化します。NAT64やNAT46などのネイティブプロトコル変換技術は、加入者ネットワークとプロバイダーネットワークがIPv4またはIPv6のいずれかをネイティブにサポートしている場合に、プロバイダーネットワーク内のゲートウェイでプロトコルスタック間を変換します。

IPv4とIPv6は何年も共存する

サービスプロバイダーは、IPv4の枯渇、IPv6の導入、IPv6への移行によってもたらされる課題および新規加入者の追加コストへの影響に、事前に対処する必要があります。サービスプロバイダーは、IPv4の枯渇という当面の課題に対処しつつ、最終的なIPv6への移行計画を立てるために、CGNATを実装する必要があります。

A10 Thunder® Carrier Grade Networking(CGN)

このような切迫したIPv4アドレスの不足は、キャリアグレードのネットワークアドレス変換(CGNAT)を含むA10 Thunder CGNで解消できます。これにより、1つのIPv4アドレスを最大64の加入者で共有できます。同じソリューションでIPv6移行機能も提供されるため、ISPはIPv6のトラフィックが主流になったとしても、その投資効果が将来にわたって続くことを保証できます。A10 Thunder CGNソフトウェアとアプライアンスは、世界中のTier 1オペレータで商用実績があり、地域のISPが必要とするキャリアグレードのパフォーマンス、機能、スケーラビリティを、余裕のある予算で提供します。French Broad EMCMCTVShentelなどの地域ISPは、A10 Thunder CGNの導入に成功し、IPv4投資コストを削減し、IPv4-IPv6への移行に成功しています。

地域ISP向けのA10のポートフォリオは、ネットワークをより効率的に拡張および保護するための重要なコアネットワーキングテクノロジーを提供します。同じキャリアグレードの機能とレジリエンス(回復力)を、地域ISPの予算と技術要件を満たす容量サイズ、フォームファクター、価格ポイントで利用でき、問題の少ないデプロイで迅速な拡張を可能にします。

詳細

詳細については、ソリューション「地域ISPがデジタル・ディバイドを解消する」ページを参照してください。