ネットワーク機器においても、仮想化によるソフトウェアアプライアンス化が一般的になってきました。今まで専用ハードウェアによるアプライアンスで提供していた機能をソフトウェアで提供するというのは、大きな方針転換を必要とします。こうした検討を始めるきっかけは、コストや運用の面など様々な理由があると考えています。

本コラムでは、ソフトウェアアプライアンス導入の際の懸念点に焦点をあて、ハードウェアアプライアンスの代わりとして使用できるのかを考察します。

まずは、ソフトウェアアプライアンスのメリットをおさらいしてみましょう。

ソフトウェアアプライアンスのメリット

ソフトウェアアプライアンスは、ハードウェアに起因する物理的な制約がなくなるというのが大きなメリットです。既にソフトウェアが動作するプラットフォームが用意されていれば、ソフトウェアをダウンロードしてインストールするだけで使用できます。そのため、ハードウェアのように入手するためのリードタイムが必要なく、迅速にデプロイすることが可能になります。デプロイまでの時間が短縮されることで、迅速にサービスを提供することができます。

サービス開始までのリードタイムの長さは、そのままビジネスに直結します。開始が遅れれば、そのサービスからの収益機会も遅れます。また、企業全体の経営計画にも影響してしまいます。

変化の激しい需要への対応もビジネスをする上では重要です。もし、最初に構築した容量を超えるような需要があった場合、それに対応できなければ収益の機会を失うことになります。また、急な需要増などでシステムが対応できないなどの不具合が発生すると、企業のブランドイメージにも影響がある事態になりかねません。

ソフトウェアであれば、CPUコア数やメモリの配分を変更するだけで、パフォーマンスを簡単に変更することができます。これにより、サービスの需要によって、パフォーマンスを変更することも可能となり、費用対効果を最大化できるとともに、急な需要の増減への対応も可能になります。

このようにソフトウェアアプライアンスを導入することによるメリットは多くありますが、ここでよくでる話として次のような話題があります。

課題1:「ソフトウェア化したらパフォーマンスがでないのではないか??」

例えば仮想基盤の場合、仮想化するためのハイパーバイザーが必要になります。このハイパーバイザーによるオーバーヘッドにより、専用ハードウェアと比較すると、パフォーマンスが落ちる可能性はあると考えられます。コンテナの場合も、OS上で動作しているため、OSによるオーバーヘッドが懸念されます。

しかし、ハイパーバイザーやOSによるオーバーヘッドに関しては、ハイパーバイザーをバイパスして、仮想マシンから直接物理NICカードにアクセスできるSR-IOVなどの機能があります。

A10のソフトウェア製品では、このSR-IOVを使用することにより、仮想アプライアンスであっても、40Gbpsや100Gbpsなどのスループット性能を実現しています。このような高速化の技術を利用することにより、現在ではソフトウェアのパフォーマンス不足と言う懸念は、ある程度解消することができています。

数10Gbpsのスループット性能であれば、A10のエントリーレベルのハードウェアアプライアンスと同等か、それ以上のパフォーマンスです。従って、ソフトウェアだからといって、パフォーマンスが出ないわけではないということが分かります。

課題2:「ライセンスの制限で、柔軟にパフォーマンスを増減できないのではないか?」

ソフトウェアアプライアンスは、ハードウェアのCPU性能やコア数を多くすることによって、性能を柔軟に変更することができます。しかし、ソフトウェアライセンスにサポートする最大帯域が設定されていると、コア数をふやしても、帯域のリミットで制限されてしまいます。

例えば、1Gbpsの帯域ライセンスを購入していた場合、ハードウェア的に10Gbpsの性能があったとしても、1Gbpsでライセンスによる帯域制限がかかってしまいます。

ソフトウェアインスタンスの帯域ライセンスを変更するには、通常ライセンスを新たに購入して有効化する必要があります。この場合は、一旦別のインスタンスを立ち上げて、そちらに新しいライセンスをいれるなどの作業が発生します。また、既存のライセンスを再利用することも検討する必要がでてきてしまいます。

このような運用だと、せっかく柔軟にパフォーマンスを変更できるのに、ライセンスがそれに対応できておらず、ソフトウェアのメリットの一つである、「柔軟なパフォーマンスの増減」を実現できなくなってしまいます。

A10は、帯域ライセンスをクラウド上にプールして、需要に応じてインスタンスに割当・再割当てを行うことができるFlexPoolというライセンス体系を提供しています。

例えば、10Gbpsの帯域ライセンスを1Gbpsずつ10インスタンスに割り当てたり、5Gbpsずつ二つのインスタンスに割り当てたりすることができます。

FlexPoolの帯域ライセンスは一つの大きなプールとしてクラウド上で管理されており、インスタンスからコマンドで帯域をリクエストすることで、自由にライセンスの帯域幅を増減させることができます。使っていない帯域はプールにもどすことで、他のインスタンスに再度割り当てることができます。

これにより、インスタンスのパフォーマンス増減に伴い、適切な帯域ライセンスを割り当てることが可能になります。

A10のFlexPoolは、他社と比較して、下記のように多くの優位性を持っています。

A10 NetworksB社C社
プール方式の帯域ライセンス
インスタンス数無制限
10Mbps単位の帯域変更
ユーザー定義のインスタンス帯域幅
機能追加ライセンス不要
年間または複数年のサブスクリプションモデル
ベアメタルインスタンス対応
10Gbps以上の帯域ライセンス
マルチクラウド対応

A10の場合、URLフィルタリングやIPレピュテーションなどのオプションライセンスもFlexPoolに対応しています。

オプションを同時購入したFlexPoolであれば、インスタンスからリクエストした時点で、購入しているオプションもそのまま利用することができます。これにより、帯域ライセンスとオプションライセンスを別々に管理することがなくなり、非常にシンプルな運用が実現します。

パフォーマンスの課題を克服したソフトウェアアプライアンス

ソフトウェアアプライアンスの大きなデメリットであるパフォーマンスの懸念は、既に克服できる部分であり、完全なソフトウェアベースのアーキテクチャであるA10製品を使用することによって、ハードウェアアプライアンスと同等の機能をそのままソフトウェアとして使用することができるようになります。

ソフトウェアアプライアンスは、ハイパーバイザー上や、パブリッククラウド上のインスタンス、ベアメタル、コンテナなどの様々提供方法を選択できることもあり、今後ますます利用範囲が広がるように思います。

現在は新しいサービスが続々と出現しており、デプロイにかかる時間が企業の収益に大きく影響することがあります。できるだけ早く新しいサービスを提供開始できるということは、それだけでビジネス上のメリットが大きいと思います。

ソフトウェアアプライアンスの活用も選択肢として検討し、競争力のあるサービス環境を構築していただきたいと思います。

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資料で分かる!A10のサーバー負荷分散

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