※本ブログは米国時間2024年11月26日に公開されたA10本社ブログの日本語訳です。原文はこちらからご覧ください。
ほとんどの企業にとって、AIを使用するかどうかはすでに問題ではなく、今日の問題はどこでどのようにAIを利用するかです。顧客にとって、AIはよりパーソナライズされたエクスペリエンスとより迅速な応答時間を実現します。従業員は、より直感的な作業方法で生産性を高めることができます。企業はセキュリティを強化しながら、新しい収益源を開拓し、競争上の差別化を図ることができます。潜在的なメリットは数多くありますが、それを実現するのは簡単なことではありません。
AI導入のための主な検討事項
企業にAIを導入する多くの場合では、コストや時間を要し、リソースを大量に消費します。投資収益を最大化するには、関係する要素は何か、組織にとって適切な選択を行うにはどうすれば良いかを明確に理解することが重要です。このブログでは、AI導入のために考慮すべき重要な事柄について説明します。
- 展開モデルの選択
- 実装上の課題の予測と解決
- セキュリティと脅威の緩和要件への対応
- パフォーマンスの確保とレイテンシの考慮
このブログでは、エンタープライズAIの主な導入モデル (オンプレミス、クラウド、ハイブリッド)と、セキュリティ、コスト、スケーラビリティなどの分野におけるそれぞれの長所と短所について説明します。
オンプレミスでのAI導入
このモデルでは、AIアプリケーションとインフラは、新規または既存のハードウェア上の独自のデータセンタ内で実行されます。このアプローチには、次のようないくつかの利点があります。
- セキュリティとコンプライアンス– オンプレミス展開により、AIインフラをユーザが完全に管理・制御できます。これにより、データの主権とプライバシに関するコンプライアンス要件が大幅に簡素化されるため、このモデルは医療や金融などの規制の厳しい企業で特に人気があります。
- コスト– 自社のハードウェアでコンピューティング集約型のAI/機械学習ワークロードを実行すると、ハイパフォーマンスなクラウドインスタンスにコストをかけるよりも安価になる可能性があります。クラウド利用料金が継続的に発生しないため、初期費用が高くても長期的なコストを抑えることができます。ほとんどのデータがすでにオンプレミスに保存されている場合は、コストのかかるデータ転送も回避できます。
- パフォーマンスとレイテンシ– 特にAIワークロード用にネットワークインフラを最適化しようと検討する場合、データ処理をデータソースの近くで行うことは、リアルタイム処理に最適です。インターネット接続の問題やクラウド プロバイダーの停止による影響も受けません。
オンプレミスAIは多くの組織にとって最適な選択肢ですが、留意すべき点もいくつかあります。AIにはCAPEX集約型の環境が必要なため、既存のリソースによっては、高価なGPU やネットワークのアップグレードにかなりの費用がかかる場合があります。また、メンテナンス、管理、最適化のために、かなり大規模なチームも必要になります。そしてもちろん、オンプレミスでは、スケーラビリティを実現するために、クラウド環境よりも時間とコストがかかります。
クラウドAIの導入
このモデルでは、AIアプリケーションとサービスは、Amazon Web Services (AWS)、Google Cloud (GCP)、Microsoft Azureなどのクラウドプロバイダによって管理されるクラウド環境で実行されます。その利点は次のとおりです。
- スケーラビリティ– 無制限のリソースをすぐに利用できるため、多額の先行投資をすることなく、新規のAIプロジェクトを迅速に開始でき、拡張も容易です。変動するワークロードにも簡単に適応できます。
- 迅速な導入– クラウドサービスでは、学習済みモデルやツールが幅広く提供されるため、新しいアイデアのテストや市場参入を迅速に行いたい企業にとって最適な選択肢となります。
- コスト– 新規ハードウェアに多額の投資をする必要はありませんが、継続的なサービス利用により長期的にはコストが高くなる場合があります。
クラウドのシンプルさには、いくつかの課題があります。AI対応アプリケーションをオンプレミスで展開すると、クラウドとの間のデータ転送によって遅延やパフォーマンスの問題が発生する可能性があり、セキュリティや規制へのコンプライアンスも複雑になります。AI推論はアプリが配置されている場所で展開される必要があります。
ハイブリッドクラウドAIの導入
ハイブリッド クラウドAI戦略により、クラウドとオンプレミスの両方のインフラを活用できます。これにより、次のようなメリットが得られます。
- 柔軟性– 両方のタイプの環境を選択的に使用することで、オンプレミスで本番環境を実行しながら、クラウドで実験、開発、テストを実行するなど、AIインフラストラクチャ戦略を自由にカスタマイズできます。
- セキュリティとコンプライアンス– 機密データはオンプレミスに残し、非機密ワークロードはクラウドで処理できるため、クラウドのスケーラビリティとコンピューティング能力を活用しながら、規制要件に準拠することができます。
- コスト管理– オンプレミス環境とクラウド環境の間でワークロードのバランスをとることで、各プラットフォームの強みを適切な場所で活用でき、コストを最適化できます。
ハイブリッドクラウドAIは両方の長所を活かすことができますが、それを実現するには多少の努力が必要です。オンプレミスシステムとクラウドシステムの統合は複雑な作業であり、専門的なスキルが必要です。クラウド環境とオンプレミス環境間でコストバランスを計り最適化することも複雑となり得ます。そしてもちろん、異なる環境間で統一されたセキュリティポリシを維持することは非常に重要ですが、困難な場合があります。
組織にとっての正しい選択
これらの要素を念頭に置いて、次のステップは組織の優先事項と能力を評価することです。意思決定プロセスでは、次のような質問に焦点を当てる必要があります。
- セキュリティとコンプライアンス、パフォーマンス、スケーラビリティに関する要件は何か?
- 初期費用と長期費用のどちらを重視するか。
- AIに充てられる社内ハードウェアリソースはあるか。
あるいは、まったくの新規投資が必要か。 - 広範囲かつ複雑な新しいAIインフラを管理できる社内人材がいるか。
これらの質問に対する答えを検討することで、最適な実装を実現するための検討を行う事ができるでしょう。