※本ブログは米国時間2025年5月28日に公開されたA10本社ブログの日本語訳です。原文はこちらからご覧ください。
人工知能(AI)は数十年にわたりテクノロジ分野に欠かせない存在でした。近年のGPU処理能力の進歩により、その進化と普及はかつてないスピードで加速しています。生成AI(GenAI)と大規模言語モデル(LLM)は、今やこの変革の最前線に立ち、組織の業務運営、イノベーション、そして顧客サービス提供のあり方を再定義しています。これらのテクノロジはもはや実験段階ではなく、リアルタイムのエクスペリエンスを提供し、業務の自動化、そして効率化の段階をさらに進めるべく、実際の環境に導入されているのです。
しかし、組織がAIを導入するにつれ、新たに複雑な課題にも直面しています。AIの強みである学習、適応、そして生成能力は、同時に脆弱性も生み出します。攻撃対象領域は拡大し、脅威はますます巧妙化しています。従来のサイバーセキュリティツールではもはや十分ではありません。そして、AIワークロードをサポートするために必要なインフラは、パフォーマンスと運用の複雑さの両面で、非常に厳しいものとなっています。
A10はAIを開発する企業ではありません。AIモデルの構築やニューラルネットワークの学習は行いません。しかし、A10は安全で高性能なデジタルインフラを実現するために何が必要かを理解しています。20年以上にわたり、世界中の組織において、アプリケーションとネットワークの可用性、セキュリティ、そして効率性を確保できるよう支援してきました。そして今、その専門知識を活かし、お客様が高いレジリエンスや高い応答性を持ち、そしてセキュアなAI対応環境を構築できるよう支援しています。
AI が企業やサービス プロバイダの業務にさらに深く組み込まれるようになると、顧客は次の 3 つの課題に直面すると考えられます。
- 遅延は、生成AIアプリケーションにおいて重要な要素です。ユーザーは、チャットボットとのやり取り、ナレッジベースへのクエリ(問い合わせ)、自動レコメンデーションの受信など、生成AIアプリケーションからリアルタイムの応答を期待しています。処理の遅延は、ユーザー体験の低下を招き、生成AIアプリケーションの価値の低下につながります。こうした期待に応えるには、高性能なネットワークと低遅延のデータパスが不可欠です。
- セキュリティは大きな懸念です。生成AIモデルは、多くの場合、独自のビジネス情報、顧客記録、知的財産といった機密性の高い社内データを用いて学習されます。そのため、サイバー攻撃者にとって魅力的な標的となります。さらに、AIの性質上、プロンプトインジェクション、モデルポイズニング、敵対的操作といった新たな種類の脅威が生まれますが、これらは従来のセキュリティツールでは検出または軽減できません。そのため、組織はAI資産を保護し、データ漏洩、モデルの破損、規制違反を防ぐために、新たなアプローチを採用する必要があります。
- 運用の複雑さは3つ目の課題です。AIインフラは従来のITの単なる延長ではなく、新たなワークロード、新たなパフォーマンス要件、そして新たなアーキテクチャ上の課題をもたらします。多くのITチームは、GPUを多用するアプリケーションの管理、データフローの最適化、AI固有のパフォーマンス指標の監視方法をまだ習得している段階です。適切なツールと知見がなければ、AI導入にあたって、スケーラビリティ、信頼性、そして費用対効果を確保することは困難です。
A10は、これらの課題に対して、以下のようにソリューションを提供します。
- 生成AIアプリケーション環境でリアルタイムのユーザー体験を提供します。TLS/SSLの復号、キャッシュ、トラフィックルーティングの最適化といったプロセッサ負荷の高いタスクをオフロードすることで、生成AIアプリケーション環境における高いパフォーマンスを実現します。
- 実用的な知見を提供し、実際の発生前にその問題を予測します。これにより、お客様はネットワークの可用性とパフォーマンスを最大限に高めることができます。
- 生成AIアプリケーション環境への脅威を防止、検知、軽減します。お客様が生成AIモデルに対する既知の脆弱性テストを実施できるようにし、A10独自の生成AI保護技術がそれらの脆弱性を取り除くことを支援します。プロンプトインジェクションや機密情報漏洩といったAIレベルの脅威を検知するために、プロンプトレベルでリクエストとレスポンスのトラフィックを検査し、これらの脅威を軽減するために必要なセキュリティポリシーをネットワークのエッジで適用します。
A10は先日、生成AIアプリケーションと生成AIモデルを実行するためのインフラをサポートするために設計された新機能を発表しました。現在、より高い完成度を目指しているこれらの機能は、Interop Tokyo 2025でデモンストレーションを行い、お客様やパートナーとの継続的なコラボレーションの一環として紹介しました。
1つ目の機能はAI ファイアウォールです。このソリューションは、様々な新たな脅威から、生成AIアプリケーション環境を保護するように設計されています。AI処理専用のハードウェア「AI Engine」を搭載したA10ハードウェアアプライアンス上で動作します。プロンプトインジェクション、データおよびモデルポイズニング、その他のAI特有の脆弱性に対する包括的な保護を提供します。さらに、セキュリティオペレーションセンタ(SOC)のレッドチーム向けのテストワークフローも備えており、A10独自の生成AIセーフガード技術を用いて、攻撃のシミュレーション、脆弱性の特定、問題の修復を行うことができます。このプロアクティブなアプローチにより、組織は生成AIモデルを本番環境に導入する前に、その整合性と信頼性を確保できます。このソリューションは、あらゆるインフラに段階的なセキュリティ機能として導入できます。
2つ目の機能は、パフォーマンス低下やネットワーク容量の問題を早期に警告するシステムであるPredictive Performance機能による知見です。高度な分析技術を活用し、パフォーマンス低下がユーザーに影響を与える前に検知します。ITチームがボトルネックをプロアクティブに解決し、リソースをより効果的に割り当て、AIワークロードに必要な高速環境を維持できるよう、実用的な知見を提供します。Predictive Performance機能は、A10 Thunder ADCやCGN、A10 Defend (旧TPS)などの既存のA10製品とシームレスに連携するように設計されており、パフォーマンスの最適化とインフラの耐障害性を実現する統合プラットフォームを提供します。
これらの機能は、AI環境特有のニーズを満たすようにカスタマイズされています。これは、当社のイノベーションへのコミットメント、進化するテクノロジ環境への深い理解を反映しています。これらの機能が成熟するにつれ、お客様とのエンゲージメントを継続し、フィードバックを収集し、アプローチを洗練させていくことで、有意義な価値を提供し続けていきます。
AIは組織の業務運営を変革する一方で、新たなリスクと複雑さももたらします。私たちは、お客様がこの変革を乗り越えられるよう支援することに注力しています。安全で高性能なインフラを提供することで、次世代の生成AIアプリケーションをより高速、安全、そして効果的に実現します。
A10ネットワークスは、お客様やパートナー様とともにこの取り組みを継続し、AI インフラの未来を形作る上で重要な役割を果たすことを楽しみにしています。