※本ブログは米国時間2025年2月5日に公開されたA10本社ブログの日本語訳です。原文はこちらからご覧ください。

クラウド移行の最中に、ロードバランシングの問題やその提供ベンダーの限界に直面するのは避けたいものです。しかし、最近の業界調査によると、多くの企業がまさにその状況に陥っています。ハイブリッド環境が当たり前となり、クラウドファースト戦略が進む中で、ロードバランサーやアプリケーション配信(ADC)機能、さらにはベンダーとの関係に不満を感じるITリーダが増えており、新たな選択肢を模索する動きが広がっています。

A10の最新レポートでは、2024年に実施された3つの調査結果をまとめています。

  • A10とGatepoint Researchによる調査(米国企業の経営幹部対象):「ハイブリッドクラウドにおける最新のアプリケーションデリバリー戦略」
  • A10とGatepoint Researchによる調査(米国企業の経営幹部対象):「ネットワークロードバランシング技術のトレンド」
  • A10とOpinion Mattersによる調査(欧州・中東・アフリカ地域企業の社内IT担当者対象):「ネットワークロードバランシング技術のトレンド」

調査結果からは、ハイブリッドクラウド時代におけるロードバランシングの重要性が浮き彫りになると同時に、多くの企業が現在のソリューションやベンダーに対して不満を抱えている実態が明らかになりました。

クラウドへの大きな期待―しかし成功は限定的

ハイブリッドクラウドの採用が進む中、米国企業のうちデータセンターを主要なアプリケーション基盤としているのはわずか25% にとどまり、56%がオンプレミスとパブリッククラウドを併用 しています。今後のクラウド戦略については、68%の経営層が「クラウドファースト」(新規アプリケーションをクラウドで提供することを優先して検討するモデル)と回答し、さらに10%は完全クラウド移行を計画 しています。

EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域では、クラウド移行の動きがさらに加速しています。IT担当者の44%がクラウドファースト戦略を採用し、37%はオールクラウド環境への移行を進めている ことが分かりました。

このクラウド移行の背景には、IT戦略の変化があります。米国では62%、EMEAでは41%の企業が「ITの近代化」を最優先課題 に挙げています。また、すべての地域で3割以上の企業がデータセンターのコスト削減を重視しており、これがクラウド導入を促進する要因となっています。

しかし、クラウドがビジネスの中心的な役割を担う一方で、多くの企業は最適な成果を得られていません。実際、米国企業の経営層で「アプリケーション移行が非常に成功した」と評価したのはわずか36%にとどまっています。

満たされない重要な要件

企業が新たなIT戦略や環境へ移行する中で、アプリケーションのセキュリティや可用性といった重要な要件を満たすロードバランシングソリューションが求められています。しかし、多くの企業が現状に満足していないことが明らかになりました。

主要な課題として、米国企業の40%が「アプリケーションセキュリティの脅威」を挙げ、52%が現在のソリューションのセキュリティ機能に改善が必要だと回答しました。さらに、新たなソリューションを選定する際、統合セキュリティ機能が最も重要な要素と考えている企業も52%に上ります。EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域でも同様の傾向があり、40%のIT担当者がアプリケーションセキュリティの脅威を主要な課題としています。

セキュリティ以外にも、多くの課題が指摘されています。米国企業では、トラブルシューティングや根本原因分析(48%)、分析・アプリケーションの可視化(32%)、自動化(32%)、アプリケーションパフォーマンス(28%)など、幅広い改善ニーズが浮かび上がっています。EMEA地域では、ソリューションの複雑さ(43%)やアプリケーションセキュリティ(40%)が大きな問題とされ、「特に問題はない」と答えた企業は1%未満にとどまりました。

ベンダーへの不満が高まり、乗り換えを検討する企業も増加

調査結果からは、技術面の課題だけでなく、ベンダーとの関係に対する深刻な不満も浮き彫りになりました。米国企業では、最も大きな不満として「ライセンス費用の高騰」(29%)が挙げられ、セキュリティの脅威(28%)よりも大きな問題と認識されています。また、4社に1社以上が「ベンダーロックインによる柔軟性の欠如」を残念に感じていると回答しました。

EMEA地域でも同様の傾向が見られ、39%が「ライセンス費用の大幅な上昇」を経験し、44%がライセンスやサポートの変更に適応するのに苦労していると答えています。

こうした課題は、企業がベンダーを変更する十分な理由になっています。米国企業では、58%が「コストの上昇」をきっかけにソリューションの見直しを検討すると回答し、55%が「ベンダーの対応やサポートの不満」を理由に変更を考えています。EMEA地域では、44%がコストの上昇、47%がサポートの不満を理由に他のベンダーを検討すると答えました。興味深いことに、セキュリティ侵害を理由に変更を検討する企業(41%)よりも、コストやサポートの問題の方が影響を与えていることが分かります。

企業が新たなベンダーを選ぶ際に重視される他の点は、「ROIの向上(45%)」や「柔軟なライセンスモデル(44%)」であり、「優れたサポート体制」は米国(32%)、EMEA(33%)の両地域で重要視される要素となっています。

A10がGatepoint ResearchおよびOpinion Mattersと共同で実施した一連の調査では、アプリケーション配信(ADC)やその他のロードバランシングソリューションの市場が大きな転換点を迎えていることが明らかになりました。多くの企業がクラウド中心の未来へ向けた課題に取り組む中で、既存のベンダーに対する不満が高まっています。もしベンダー側が顧客企業と共に成長できるパートナーシップを示せなければ、企業はより信頼できる選択肢を求めて乗り換えを進めるでしょう。

国別の対応などの詳細については、レポートをダウンロードすることでご覧いただけます。